68回目の夏

長崎にある平和祈念像は、原爆落下地にほど近い平和公園に建てられた像で、垂直に高く掲げた右手は原爆の脅威を、水平に伸ばした左手は平和を、横にした足は原爆投下直後の長崎市の静けさを、立てた足は救った命 を表し、軽く閉じた目は原爆犠牲者の冥福を祈っているそうだ。

小さい頃から何度も見てきた像の祈りは、未だに成就しない。
いつの間にか、核兵器を持つ国は増加し、それを持つことで、壊れかけた国家を維持しようとする愚かな国もある。
またぞろ、東西冷戦復活のきな臭い風も吹いている。


陽炎だけを残し、14万余人の命を一瞬奪ってしまったあの日から68回目の夏。



被爆者は、次々と旅立っていく。
被爆2世も、高齢化が進む。


力無き者は、平和を祈る術しかないのか?


黙祷